平成最後の、平成31年(2019年)那覇市「辻旧廿日正月神事」と「花街・辻」

ちゅううがなびら。今日はちょっとヒンヤリの那覇です。
今日も沖縄ジョートー市場ブログにお越しいただきありがとうございます。
七海こと沖縄ジョートー市場店主・安積美加(あさか・みか)です。

早いもので来る日曜(2019年2月24日)は、旧暦1月20日。
旧廿日正月(ハチカソーグヮチ・二十日正月)神事です。
那覇市辻のムラヤー(辻新思会)をお昼12時頃に出発して下記の8つの拝所・御嶽をまわります。

※今年の「じゅり馬まつり」は、2019年3月31日(日)です。
もともとは、旧廿日正月の神事とともに「じゅり馬まつり」も同時に奉納されていました。
今年はたまたま旧暦廿日が日曜ですが、昨今は、神事はこれまで通り旧暦一月廿日に執り行い、「じゅり馬まつり」は話し合いの上、近い日曜に開催されることが多いようです。

【撮影】2019年2月14日(木)

那覇市「辻旧廿日正月神事」辻御拝廻り順序

  1. 鏡寺(カガンヌウティラ)
  2. 志良堂御嶽(シラドウウタキ)
  3. 祝女の井戸(ヌールガー)
  4. イシカブイ
  5. 軸(ジク)
  6. 辻御嶽 開祖の祠
  7. 辻開祖之墓
  8. 火の神(ヒヌカン)
鏡寺(海蔵院) 【撮影】2019年2月14日(木)

ぜひ知って頂きたい。「花街・辻」のこと

ご縁あって、七海は昨年から少し辻に関わらせていただいております
それまでは、辻のことはなんとなくしか知りませんでした。
ご縁を頂いてから、いろいろと勉強させて頂き、新たに知り得たこともたくさんあります。
一番に感じたのは、かつての七海も含め、多くの方が「辻を誤解されているようだ」ということです。

那覇市辻について、ぜひ多くの方に知っていただきたいことがあります。
以下、七海(安積美加)が沖縄観光情報サイト『沖縄CLIP』で制作した記事から、辻についてぜひ知っていただきたいことを抜粋して、少しまとめました。
辻について語られているのは、「一般財団法人辻新思会(つじしんしかい)」理事長・上江洲安明(うえず・あんめい)氏です。
花街・辻を知っていただくために、ぜひご一読いただけましたら幸いです。

花街・辻について

花街・那覇市辻(つじ)の歴史は、琉球王国・第二尚氏王統11代尚貞王(しょうていおう)の時代まで遡ります。
1672年、辻と仲島が創建。渡地を含めた、「辻・仲島・渡地(チージ・ナカシマ・ワタンジ)」は三大花街としてその名を馳せます。
1908年(明治41年)、仲島と渡地が辻に統合されたことにより、辻には政財界や教育界をはじめ、あらゆる人々が集い、夜毎、高度な接待や華やかな宴が繰り広げられました。
しかし1944年(昭和19年)、「10・10空襲」により辻は消失、270年あまりの歴史に幕を下ろしました。

そして戦後。辻はふたたび、食事と琉球芸能を堪能できる料亭が立ち並ぶ花街として復活、各界著名人をはじめ多くの人々が足繁く通いました。なかでも、「料亭松之下」、「料亭左馬(さま)」、「料亭那覇」は那覇の三大料亭と呼ばれたそうです。しかし、栄枯盛衰。時代は流れ、現在も営業されているのは唯一「料亭那覇」のみとなりました。

以下、「財団法人 辻新思会(つじしんしかい)」理事長・上江洲安明(うえず・あんめい)氏に花街・辻について教えていただきました。(※辻新思会は、現在の廿日正月神事、じゅり馬まつりなどを牽引している団体です。)

「尚貞王時代につくられた辻は、女性たちだけでひとつの町を構成していました。辻は、世界でも類を見ない女性だけの町だったのです。彼女たちは接客や芸事だけでなく、料理、洗濯、縫い物から豚の世話まで、生活に必要なことをすべて身に付けていました。また、辻の女性たちはきちんと教育を受け、礼儀作法もしっかりと身につけていたので、最高のおもてなしができました。そんな彼女たちがとくに大切にしたのは、“義理・人情・報恩”なのです」。

特筆すべきことは、辻には秩序があり、女性たちには品位があったことです。辻の女性たちにまとまりがあったのは、もともとは首里城にいた教養のあった女性たちであったからだと考えられます。城内で暮らしていた女性たちが辻に下りてきて、辻のアンマー(抱え親・貸座敷の女将)となった。豆腐ようやラフテーなどは当時の庶民の食べ物ではありませんから、彼女たちが宮廷料理を辻に持ち込んだと考えると自然です。そして、辻から、接待、社交、芸能、行儀作法、髪結い、衣装、料理など、あらゆる文化が生まれたのです」。

辻は女性が花を売る遊郭というイメージがありますが、そうではありません。辻には、吉原のような黒塀もありませんでしたし、見張りの男性門番もいませんでした。辻は、食事や芸能を楽しむ、社交のための花街なのです。あまり知られていませんが、辻の女性は高額納税者でもあったのですよ。私は辻の誤ったイメージを変えたいと考えていますし、辻を守るのは私の使命だと思っています」。
穏やかだけれども、熱意をもって語る上江洲さんから、辻に対する強い想いと信念に基づく責任感がひしひしと伝わってきました。

※以上、沖縄CLIPより抜粋編集 → 全文 沖縄CLIP『沖縄を代表する老舗料亭「料亭那覇」の魅力』安積美加

辻の「ムラヤー」とも呼ばれる「辻新思会」事務所。ちょうど辻御嶽の真向かいにあります。
辻新思会について
法人の名称:一般財団法人辻新思会
法人の名称フリガナ:イッパンザイダンホウジンツジシンシカイ
郵便番号 :900-0037
主たる事務所の住所:沖縄県那覇市辻2丁目8番7号
代表電話番号:098-863-1212
代表者の氏名:上江洲 安明
<事業の概要>
当法人は辻地域の歴史及び伝統文化を継承・普及していくことで、地域住民の利益の増進に寄与することを目的とし、辻地域の文化歴史の継承保全事業を行う。
国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイト 公益法人information」より

那覇市「辻旧廿日正月神事」で廻る拝所・御嶽について

廿日正月神事で廻る各拝所・御嶽について簡単にご紹介いたします。
(以下、文献を読み漁り、上江洲氏や辻新思会の方々に伺った内容を簡単にまとめました。)

◆ 呼称について
例えば、「1.鏡寺」は「海蔵院」が正式名称とも言われています。また、「3.祝女の井戸」は「ヌールガー」であったり「ヌールウカー」であったりなど、呼び方や読み方はいくつかありますが、代表的な呼称で記載しております。

◆ 辻の開祖
辻の開祖とされるのは三人の王女、「ウトゥダルヌメー」「ウミチルヌメー」「マカドゥガニヌメー」です。
※上記は上村渠の説で、前村渠には別の伝説も伝わっており、諸説あります。

◆ 辻村の構成
辻は、「上村渠(ウィンダカリ)」と「前村渠(メーンダカリ)」の二つの集落で構成されていました。
上村渠の守護神は獅子、前村渠の守護神は弥勒(ミルク)です。
辻御嶽に獅子と弥勒様を保管するための祠がありますが、湿気が多いため、現在はムラヤーで保管されているようです。

1.鏡寺(カガンヌウティラ)
辻開祖の三人の王女の名前と侍女(ウサザカイヌアンマー)の名前が刻まれた位牌が祀られています。
かつては広大なお寺で、首里から下りてきた王女たちが最初に暮らしていたところと伝承されています。
現在は個人様のお屋敷の一室がお寺となっています。

2.志良堂御嶽(シラドウウタキ)
かつては久米村(くにんだ)が管理されていたとされる唐旅への往復の航海安全祈願の御嶽です。
また、辻全体の御嶽であるとともに、首里や唐への遥拝所とされています。
現在はマンションやビルに囲まれた一角にひっそりと佇んでいます。

3.祝女の井戸(ヌールガー)
辻開祖の王女たちが生活に使っていたとされる井戸。
伝承によると、あたり一帯は掘っても塩水しか出なかったのに、こちらの井戸だけは甘い水が湧き出ていたそう。
現在は個人様の敷地の一角に佇んでいます。

4.イシカブイ
龍神様を祀っています。【聞き取り/上江洲安明氏 2019年2月24日(日)イシカブイにて】
現在でも熱心にお参りされている方がいらっしゃいます。
現在祠は1つですが、両側に祠らしきものがあった名残がありますので、ひょっとしたらもともとは3つ祠があったのかもしれません。(by ミカ)

5.軸(ジク)
首里城への遥拝所です。香炉は首里に向かって置かれているといわれています。
上江洲氏のお話では「開祖の王女たちが暮らしていた真茅御殿(マカヤウドゥン)の台所あたりになるでしょう」とのことです。
【聞き取り/上江洲安明氏 2019年2月15日(金)辻御嶽にて】

6.辻御嶽 開祖の祠
貸座敷組合によって昭和2年11月11日に改築された、辻の開祖とされる三人の王女、「ウトゥダルヌメー」「ウミチルヌメー」「マカドゥガニヌメー」の祠3つです。
「開祖である王女たちのご位牌は鏡寺にあり、そのお墓はすぐお隣にありますね。では、こちらはいったいどういった意味合いになるのでしょうか?」と、上江洲理事長にお尋ねしてみたところ、「そうですね。こちらは王女たちのお休み処、いわゆる庵(いおり)ですね」とのことでした。
【聞き取り/上江洲安明氏 2019年2月15日(金)辻御嶽にて】

7.辻開祖之墓
貸座敷組合によって昭和2年11月11日に改築された辻の開祖のお墓です。墓石の前には香炉が3つ並びます。

8.火の神(ヒヌカン)
大きな香炉が2つ置かれています。
辻のふたつの集落、「上村渠(ウィンダカリ)」と「前村渠(メーンダカリ)」のヒヌカンです。

沖縄県那覇市辻にある首里への遥拝所「軸(ジク)」

平成最後となる「旧廿日正月」の神事(2019年2月24日)、艶やかで賑々しい「じゅり馬まつり」(2019年3月31日)、お時間ございましたらどうぞいらしてください。
どちらも七海、おります。(「じゅり馬まつり」では司会を務めさせていただきます。)
ぐすーよー、めんそーちくぃみそーちよーたい。

今日もご愛読にふぇーでーびる☆
今日はひさびさの長文になりました。
最後までお読みいただきありがとうございました☆
みなさまに琉球弧のすべての神々のご加護がありますように☆

4 thoughts on “平成最後の、平成31年(2019年)那覇市「辻旧廿日正月神事」と「花街・辻」

  1. すみません、2月24日は神事で12時から14時まで鏡寺、志良堂御嶽、祝女の井戸、イシカブイ、軸、辻御嶽開祖の祠、辻開祖之墓、火の神をまわられるわけですね。その時間にそのあたりに行けば一般人でも見学できると思って良いのでしょうか?

  2. 西住さま
    はい。神事もじゅり馬まつりも、どなたでもご自由にご覧いただけます。
    2019年2月24日(日)神事は、辻ムラヤー(新思会)をお昼12時頃出発予定です。
    お時間がございましたらどうぞお越しください。

  3. ありがとうございました。昨日新思会前に行き、最後までではありませんでしたが見学させてもらいました。素人でただ傍観しただけでしたが、貴重な体験だったと感じました。

  4. 西住さま
    ご丁寧にありがとうございます。
    廿日正月神事にお越しいただいたのですね。ありがとうございました。

    神事とは打って変わって、3月31日の「じゅり馬まつり」はとても華やかで、「じゅり馬」をはじめとした奉納舞踊がご覧いただけます。
    ご都合がよろしければ、ぜひこちらにもお越しくださいませ。

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